特別支援教育申請のための診断書、および療育に通うための意見書等作成について

特別支援教育に関しては、国も県も診断書は必須としておりません。しかし、沖縄では特に特別支援教育の申請が多い市町村ほど、診断書を求める傾向があるようです。これが、診断書が間に合わず支援を受けられなかったために学校に不適応になってしまうこどもの増加や、医療機関のひっ迫につながっています。

療育に通うためには、「通所受給者証」が必要ですが、国は障害が確定していなくてもよい、診断がついていなくてもよい、としています。しかし、県内の自治体が療育に通う人数や支給日数の増加を気にして、申請基準をきびしくているようです。

上記申請に関して、保護者の希望通りにならなかった場合に、診断や当院の対応を批判してくる保護者や学校、行政があります。保護者からすると、学校や役所から言われて、こどものために来たのに、それを医療機関が妨げた、と感じてしまうのかもしれません。

診断基準を私のほうで変えることはできませんが、行政の対応や申請の仕方については変えていけるはずです。

私は、このような、結果的にこどもや保護者の不利益になり、保護者や医療機関を消耗させ、さらには、それを医療機関のせいにしてくるやり方をしてくる自治体に対して、対話をして相互理解を深め、こどもの将来性が損なわれないような仕組みができるようにしていきたいと考えております。

今年度は、県内の自治体に対して、以下のような質問状をもとに診断書や意見書を求める要件を調査しながら、対話をする糸口を作っていきます。詳細に関しては、こちらをご覧ください。

当院は小さい診療所で、診察できるお子さんの数も、作成できる診断書などの数も限られているため、各自治体や保護者の方のご意見を参考に、今後の診療をどのように行うべきか、考えていきたいと思います。

なお、当院では、提出先や取得目的が明確な診断書の作成は今後も行っていきますので、ご安心ください。

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質問状 鑑文

平素より大変お世話になっております。皆様のおかげで、当院は開院して2年半ほどで、離島を含め、県内各地より2000名以上の児童が受診してきました。一方で、丁寧な診療を心がけているため、診察に時間がかかり、まだ赤字になる月があります。しかしながら、現在、初診の受診制限を検討中です。その一因として、診断書作成業務の増加によって、診療時間の確保が困難になっていることがあります。特別児童扶養手当診断書のように法的な根拠があるものもありますが、サービス支給や支援実施のために、自治体独自で設定した診断書や心理検査を医療機関に求めてくることが多々あります。そのため、県内各地の数少ない専門的な医療機関は受診までの待機期間が長くなるだけでなく、それまで通院していたお子さんの診断書作成や検査実施のニーズに対応できなくなり、子どもが転院せざるを得なくなる状況になっています。

また、診断書の提出先から、診断名についての抗議もよくいただきます。学校の先生からは「この診断では、学校が考える支援クラスに入れない」などですが、それは、文部科学省や各市町村の教育委員会に言うことであって、診断基準にのっとって診断している医師に言うことではないはずです。国や県は支援学級に該当する診断名を例としてあげていますが、実際には診断書提出を必須としているわけではなく、求めているのは各市町村の教育委員会です。通所受給者証のための意見書に関しても、こちらが記載した支給日数に関して言及してくる市町村がありますが、支給日数を書くことを求めてこない市町村や様式もたくさんあります。支給日数に関しては、症状の程度をもとにした設定基準を定めることが重要かと思います。

先日は当院に通院する患者が、行政から、行政が望む診断書を書いてもらえる他の医療機関へ転院するよう促されました。行政の下請けとして、医療機関は自分たちに都合のよい書類を黙って書けばよい、ということなのでしょう。これまで、医療側から様々な形で国や自治体へ要望をあげてきましたが、変化がないばかりか、行政・教育機関からは要求がさらに増えてきて、それが当然、という姿勢です。公権力側が、一般の沖縄県民に障害認定を迫る姿勢は、沖縄の将来を担うこども達の不利益となり、さらなる格差社会を生み出すことにつながります。私はこのような状況を看過してはいけないと考えました。

本質問状をもとに、貴自治体における、通所受給者証や特別支援教育申請の手続きを確認させていただき、当院の今後の診療のあり方を検討する際の参考にしたいと思います。